国内線・国際線を問わず、東京の空の玄関口となっている羽田空港(正式名称は東京国際空港)。コロナ禍が開けてから利用者が戻り始め、2024年利用者数は、国内線が前年比102.5%、国際線が同128.7%、全体では同108.7%となっていて、ほぼ、コロナ禍前の利用者数に戻っています。
羽田空港第3ターミナルを主体とする国際線利用者の内訳をみてみると、各報道でご存知の通り、やはり、日本人以外(インバウンド)の利用者増がみてとれます。リピーターインバンドの方々は、初回到着した東京を避けて他都市へ到着という傾向もあるそうですが、やはり、東京の流入出は堅調ということなのですね。
そのような活況あってか、駐車場予約転売や白タクなど様々な悪行が横行するようになってしまったのかもしれません。ただ、コロナ禍前と利用者数が同等であることを考えると、この悪行横行の背景を理解するには別の視点が必要かもしれません。
駐車場混雑を避けるために追加料金を払ってでも駐車場を事前予約したいとは尤もなことですよね。予約転売が横行するほど駐車場全体がこれほど混雑する背景は、国土交通省検討資料でも解説されているように、空港利用者の公共交通機関利用率が下がり(91%→83%)、自家用車等利用率が増えている(8%→14%)からなのだそうです。資料にもあるように、鉄道利用率が減少している反面、バス・タクシー利用率には変化がないので、生活様式変化ということかもしれませんが、大きな荷物を携えて空港利用となると、やはり鉄道系より自動車系を選択したくなるのは十分理解できます。大きな荷物を抱えた来日客も同様で、フライトを終えたら、とにかく宿泊先へ…となると、バスやタクシー利用になってしまうのでしょう。このような状況で日本人利用客を狙うのが駐車場予約転売、外国人利用客を狙うのが白タクということになってしまい、対策を施そうにもゴテゴテになっているのが実態です。
自動車系利用率が高まっていることもあり、羽田空港乗降場所の混雑は日常茶飯事になりました。その原因はなにかと考えてみると、羽田空港公式サイトにあるフロアガイドで理由がわかるような気がします。まず、出発・到着が分離されていないから、当然、すべての車両が同一場所へ集まります。また、第3ターミナル1Fエントランスプラザを見てみると、一般車乗り場は見当たりません。、国際線で出発する・到着した家族・友人を乗せた・乗せる一般車は、どこで停まればよいのでしょうか?
一般車に加えて、予約を得たハイヤーらしき車や、白タクみたいな車も、みんな、ターミナルビルに一番近い「タクシー降り場・一般車降り場」に溜まってしまいます。そこに、ひっきりなしにやってくるお客さんを乗せたタクシーが、2重にも3重にも停車し支払いを待ち、荷物を降ろす。混雑しないわけがありません。空港側の目論見としては、迎えに来た一般車は駐車場に停めて、ロビーでお迎えを…と言いたいのでしょうが、混雑した駐車場に駐車できなければ、何処に行けばよいのでしょうか? きっと設計時点から、一般車はここで待っていてはダメ…って設定になっていたのかもしれませんが、あまりにも配慮のない設計ですよね。
特に、車いす利用者や足腰に不安な方々にとっては、空港内移動距離が少ないに越したことはないので、移動距離の長い駐車場が最適かと言えば、決してそうではありません。第3ターミナルで優先乗降場所として用意されているのは、一般車降り場とタクシー乗り場のみです、隣接するP5駐車場1Fにも優先乗降場所が設置されていますが、移動距離が長い上に、送迎の車がP5駐車場に入ることができなければ、辿り着くことができません。
交番の眼の前であるにも関わらず、これまで、タクシー・ハイヤーが配慮なく停まっていた一般車降り場優先場所は、最近、しっかりと「専用」表示が施され、不法な停車が減りつつあります。そのような表示が施されていないタクシー乗り場や、第1・第2ターミナルの優先場所は、ほぼ無法地帯です。第2ターミナル国際線乗降場所には、こんな掲示がありますが、なんの効果も生み出していないようです。
また、優先場所自体も改善が必要です。第3ターミナルは、十分な広さ、スロープや手摺がしっかりと整備されていますが、第1・第2ターミナルは、とてもお粗末です。1台のみの停車枠が用意されているものの、その枠内に停車すると、車いす用として用意された段差のない部分へアクセスすることができず、仕方なく停車枠からはみ出して停車するしかありません。車いすリフトを展開し、尚且つ、段差ない場所へアクセスするには、更に停車枠からはみ出さなければなりません。いったい、いつの時代の感覚で設計・設置しているのでしょうか。
来日される車いす利用者の方々は、東京公共交通機関のアクセスビリティーに感心されてはいますが、アクセシブルルームと銘打ったホテル客室が名ばかりであることに落胆されているのも事実です。東京の空の玄関口として、しっかりとした設計や、タクシー・ハイヤーにもマナーある利用をしてもらいたいものです。