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車いすでのお出かけをお手伝いする予約制タクシー

ユニバーサルデザインタクシーと車いす

東京オリンピック2020を契機に、東京都内や全国各地でユニバーサルデザインタクシーの主力であるJPN TAXI(ジャパンタクシー)導入が進み、街中の景色として定着してきました。東京都内のタクシー事業を管轄する国土交通省関東運輸局が、ユニバーサルデザインタクシーについて説明しているサイトがあります。そして、このサイトに掲示・紹介されているユニバーサルデザインタクシーは、JPN TAXIで懸念されている幾つかの課題とは無縁の仕様となっています。JPN TAXIが同じような仕様であれば、より多くの車いす利用者のお出かけが楽に、楽しいものになっているのではないかと感じます。

JPN TAXI ©1995-2023 TOYOTA MOTOR CORPORATION. ALL RIGHTS RESERVED.
Universal Design Taxi  ©国土交通省関東運輸局

車いすは、車いす利用者ご自身が操作される自走タイプ(含・電動)、付き添われる方がいらっしゃることを前提とした介助タイプ、背もたれや座面角度を調整できるタイプなど、ご利用者の身体状態に合わせて選択・利用することが前提なので、それら全てのタイプに対応できるタクシーという乗物を作り出すことが、如何に困難か、想像いただけると思います。車いすを利用されている方がいらっしゃるご家族で、自動車メーカー各社が販売している福祉車両を利用されているケースは年々増えています。車いすご利用者の身体状況に合わせて、いろいろなオプションを組み合わせることもできます。しかしながら、不特定多数のご利用者を想定するタクシーの場合、乗車されるご利用者に100%フィットする装備を用意することは、ほぼ不可能です。

トヨタ・ウェルキャブ
日産・ライフケアビークル
ホンダ・福祉車両
ダイハツ・フレンドシップ
スズキ・ウィズシリーズ

ユニバーサルデザインタクシーとして、車いす利用者に提供すべき大切なことは、お出かけという楽しい時間や、必要に迫られた通院等で、安全且つストレスない移動手段です。前述の通り、JPN TAXIをはじめ、ユニバーサルデザインタクシーが、すべての車いす利用者に満足な移動手段を提供できるとは限りません。様々な要因から、車いす利用者・介助者、さらには、タクシードライバーさんをも困難な状況にしてしまいます。JPN TAXIによる車いす利用者への乗車拒否などの話題がメディアで取り上げられることがありますが、タクシードライバーさんだけが、その責任を負わねばならないのでしょうか? JPN TAXIが抱える仕様的・機能的課題が故に、全てのタクシードライバーさんに、その課題を克服しろと要求するのは無理があります。

国土交通省が、2019年11月19日に通達(国自旅第191号)を発行しています。国土交通省のサイトでは見つからないのですが、その内容が北陸信越運輸局サイトにアップされてます。この通達内の国自旅第191号の2に、こんな内容が記載されています。

3.一部の障がい者団体等から可否について指摘されている「車いす利用者がUDタクシーに乗車する際、車いすを車内で前向きに転回しないままで、車いすおよび車両に設置された3点式シートベルトを固定・装着せず、進行方向に対して横向きのまま乗車すること」については、UDタクシーの「車椅子を固定するための空間と設備」が道路運送車両の保安基準(昭和26年運輸省令第67号)上の「座席」には該当せず、当該乗車行為において道路交通法(昭和35年法律第105号)第71条の3第1項及び第2項に規定する座席ベルトの装着義務の対象に該当しないほか、当該空間と設備は「座席に準ずる装置」に該当し、同法第55条第1項の「乗車のために設備された場所」と解され、車いすを自動車に固定しないとしても同項違反とならない。このため、これらの同法の規定に違反するものとして道路運送法第13条第1項第4号の該当を主張して、当該乗車行為をしようとする車いす利用者に対し運送の引受けを拒絶することは認められないと解されるので留意されたい。国自旅第191号の2
  • UDタクシーの「車椅子を固定するための空間と設備」は道路運送車両の保安基準(昭和26年運輸省令第67号)上の「座席」には該当せず、「座席に準ずる装置」に該当する。
  • 「座席」ではないので、座席ベルトの装着義務の対象にはならない。 → 座席ベルトをしなくてもよい。
  • 「座席に準ずる装置」なので、車いすを自動車に固定(走行中に車いすが動かないように車体に繋ぎ止めておくこと)しなくても、法的に問題がない
  • よって、「車いすを固定できないとしても横向きで乗車したい」、「シートベルトは締めなくても構わない」と要求する利用者を拒絶(乗車拒否)してはいけない。

JPN TAXI設計上では想定されていない、車いすを進行方向に対して横向きにしたままの乗車を拒否してはならない、また、進行方向に向けて乗車した車いす用に設置されているシートベルトが利用できないことも問題ではないと言い切っています。車いすを車内固定しないままでの走行が、どれほど危険なことか、国土交通省が知らないわけがないと考えますが、この通達では「問題なし」としています。シートベルトもしない、車いすも固定しない、そんな状態で急ブレーキが必要な事態、最悪のケースでは衝突事故になった事態、車いす利用者がどのようなダメージを受けるか、考えるだけでも恐ろしいです。この通達以降、改善策が盛り込まれた新たな通達は、見つけることができませんでした。

「障害者の権利を実現を目指す運動を通して、すべての人が希望と尊厳をもって、ともに育ち、学び、働き、暮らせるインクルーシブな社会を作る」というビジョンを掲げる認定NPO法人ディーピーアイ日本会議のサイトには、この通達発行に際して、こんな案内がなされています。
UDタクシーの通達がでました!ユニバーサルデザインタクシーによる運送の適切な実施の徹底について

3. 横向き乗車を拒絶してはならない。⇒ 横向き乗車OKへ!
 車いすは道路輸送車両の保安基準上の座席に該当しないため、シートベルトの着用は義務ではない。
 車いすを自動車に固定しないとしても違反にはならない。

UDタクシーの通達がでました!ユニバーサルデザインタクシーによる運送の適切な実施の徹底について

「横向き乗車OKへ!」、「シートベルト着用は義務ではない」って、こんな危険な乗車を、障害者を支援する組織が推奨するのって、何故?と思わざるを得ません。確かに、道路運送車両保安基準(1951年)では、車いすは「座席」とされていないため、座席でない車いすは、道路交通法(1960年)で求められたシートベルト着用義務の対象ではないという国土交通省にそった主張です。ただ、この主張を言い替えれば、車いすと利用者は、乗客ではなく貨物同然ということです。車いすを利用されている障害者の権利を実現することを標榜するなら、もっと異なる対応があって然るべきじゃないでしょうか。

半世紀以上前のお約束を持ち出してきて、車いす利用者に危険な乗車を容認したり、タクシードライバーに乗車対応を強要したりするのは、タクシー利用者の安全を脅かし、タクシードライバーを苦しめることですし、時代の趨勢・実情に目を向けず、根本的な対策・改革を行わない怠慢としか言いようがありません。一般社団法人東京タクシー・ハイヤー協会では、「車いすユーザーからの乗車依頼時における対応マニュアル」を公開しています。このマニュアルの中で、「JPN タクシーへの横向き乗車」について、このように説明しています。

道路交通法上、横向き乗車時にシートベルト非着用でも、違反にはなりません。しかし、シートベルト非着用時は着用時に比べて、事故の際の受傷・重症化リスクが高まります。
JPN タクシーへの横向き乗車

法的には問題ないが、危険が伴うことを明示しています。矛盾と怠慢への苦肉の策とでも言えば良いのでしょうか。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。お伝えしたかったのは、車いす利用者の方々、何らかの介助が必要な方々への移動手段を提供する我々タクシー事業者は、このような矛盾と怠慢の中でも、ご利用者の安全と利便性を確保すべく、日々運行しているということをご理解いただきたいということです。JPN TAXIのドライバーさんも、研修や訓練を経て、また、様々な事例をもとに、より良い対応力を身につけておられる方が多数いらっしゃいます。JPN TAXIの持つ仕様的・機能的課題を出来る限り取り除いたウィルゴのような福祉車両も含めて、ご利用者の安全と利便性を高めた移動サービスが、もっともっと街中で安心して利用していただける日が来ることを願わざるを得ません。

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